著者
末木 新 SUEKI Hajime
出版者
日本精神衛生学会
雑誌
こころの健康 : 日本精神衛生学会誌 = The Japanese journal of mental health (ISSN:09126945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.71-79, 2016

本研究では、大学生を対象にした調査を実施し、仮想評価法(自由回答方式)を用いて自殺死亡リスクの低減に対する支払意思額を推定するとともに、自殺に関する態度の測定を行い、その関連を検討した。組み入れ基準を満たした大学生106名分のデータを分析した結果、自殺死亡リスクを20%削減することに対する支払意思額は、中央値で1000円(統計的生命の価値:2500万円)であった。支払意思額と自殺に関する態度の関連を検討した結果(順序ロジスティック回帰分析)、「自殺の理解・予見不可能性」の低さとWTPの高さが有意に関連していた。「自殺の正当化」「自殺の援助不可能性」とWTPの間に有意な関連は見られなかった。上記の結果より、自殺リスクの低減に対する税金投入への理解を求めようと考えた場合、「自殺の理解・予見不可能性」を低減するような知識を提供することで、その目的が達成される可能性は高くなると考えられた。